1930年11月1日に創立された独立美術協会。昨年に第80回記念展を迎え、美術評論家によるパネルトークや『独立美術協会80年史』刊行など、日本の洋画をけん引し続ける歴史を、展覧会を中核に据えながら、多面的にとらえた企画が数多く開催された。
未来へ向け、また新たな一歩となる本年は、10月16日より第81回独立展が開幕。会場より一足早く、代表的な作家の出品作を自作コメントとともに紹介する。また、事務局委員をつとめる絹谷幸二氏に今展への意気込みを聞いた(記事はこちら)。
【会期】 2013年10月16日(水)~28日(月)
【会場】 国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)☎03-6812-9921(会期中のみ)
【休館】 10月22日(火)
【開館時間】 10:00~18:00(金曜のみ20:00まで、また18:00以降は入場無料)
【料金】 一般700円 すべての学生、生徒、障がい者と介助者、75歳以上は無料
【関連リンク】 独立美術協会
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奥谷博 「自画像―Césarの親指―」193.9×259.1cm
2007年、世界遺産条約採択35周年記念展をパリで開催した折、ラ・デファンスに新凱旋門を見に行ったのですが、ほど近い場所にそびえていたのは、とんでもなく大きな親指。シュルレアリスム的樹木の枝ぶりとこのセザールの親指が、現代の不安感を醸し出せばと思います。
絹谷幸二 「祝・飛龍 不二法門」193.9×259.1cm
今年6月、富士山が世界文化遺産に登録されました。お祝いの花を持ったこどもが飛龍に乗って寿いでおります。これは夏にギリシアを旅した折、イルカに乗ったこどもの意匠をよく見かけたところに想を得ております。存在が悠久の時を語り続ける「不二」。不二はいつも、私たちに双眼でひとつのものを見ていく姿勢を教えてくれます。
大津英敏 「少年時代」181.8×259.1cm
私のパリ時代、画面右端のポンヌフから150メートル程のところにアトリエがあり、住まいはセーヌ河のもう少し下流、エッフェル塔の下にありました。家族の思い出の地であるシテ島の宙空に中学時代の長男を配し、少年時代としました。
寺島穰 「薔薇の門―切通―」193.9×259.1cm
時空構築をなんとかできないものかと青と黄の羽交い絞めの連続を描いています。羽交い絞めの領域に捉えられているのは現実のしがらみ。時間的・空間的に、心理的・肉体的にうつりかわる、何かの門をくぐるとき、現実には棘のような障害がつきものです。
木津文哉 「ふとん屋」259.1×193.9cm
前々から狙っていた駅の近くの廃業して久しい感じのふとん屋を描きました。壊されて古びたものと大事にされて古くなったものは違います。平和な時間が過ぎていき蓄積し、そうして古くなったものたちを、これからも描いていきたいです。
石井武夫 「アトリエのモデル達」193.9×259.1cm
自分の中の象徴的なイメージを集積しました。生命の象徴である裸婦と、死をかたどるダミー、これら両方を、存在だけしていて生命のない自身の記憶を象徴するモノたちをちりばめた画面に描きました。命全体のダイナミックなエネルギーを表せたらと思います。
齋藤研 「ふるさと」193.9×259.1cm
私は1939年、(戦前の)池袋にあったアトリエ村で生まれました。戦禍を避け、4歳で疎開。福島県相馬郡新地町というところで育ちました。今回の画面、対照的な二つの風景はわたしの心のふるさとです。
金井訓志 「花籠―CONGRATULATION A.M.-」194×244 cm (制作途中)
私の住んでいる前橋市には今まで美術館がありませんでした。漸く今年幅広い芸術を扱う『アーツ前橋』が誕生します。これで前橋もアートの研究・教育・収集等、文化にとって大切な拠点が出来るわけです。この施設開設に少し関わったので、お祝いと応援の気持ちを描いてみました。また嬉しい気持ちの人、ハッピーになりたい人すべてにお贈りします。
【会期中のイベント】 (敬称略)
パネルトーク(展示第2室)
10月19日(土) 寺島穰(進行)、林敬二、馬越陽子、金森良泰、瀬川富紀男
10月26日(土) 絹谷幸二(進行)、奥谷博、福島瑞穂、乙丸哲延、木津文哉
ギャラリートーク(展示第2室)
10月20日(日) 石井武夫、大場再生、山本雄三、小林正、大久保宏美
10月27日(日) 湯澤宏、金井訓志、福満正志郎、権藤信隆、多見谷恭子
ギャラリーコンサート(展示第3室)
10月18日(金) 吉武大地(バリトン)、小林ちから(ピアニスト)
10月25日(金) 蛇腹姉妹(アコーディオン)
「新美術新聞」2013年10月11日号(第1325号)1面より